鳳宍ver(鳳)


「長太郎」
言われて顔を上げる。
「何ですか、宍戸さん」
他の誰とも違う呼び名を使える権利を今でもくすぐったくなるような気持ちで噛み締める。
彼が自分を呼ぶ名にもまた。
彼にしてみれば、こちらの方が呼びやすいというだけなのかもしれないけれど。

――――――長太郎

そう言った言葉の通り、彼は俺の名前をあまり間違えない。
それが何て嬉しいことなのだろうとよく思う。
宍戸さん、そう言えて嬉しいのに今でも時々「宍戸先輩」と言ってしまうのは、悲しいことに慣れてい ないからだ。

だからそれが当たり前になるくらい名前を呼ぶ権利を俺に下さい。



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鳳宍ver(宍戸)


「宍戸さん」
呼ばれて俺が振り返った瞬間、アイツがあんまりにも嬉しそうに笑うから。
つられて笑ってしまわないように、俺はいつも苦労する。
本当は、そう呼ばれる毎に、アイツと同 じくらい幸せを感じてる、なんて言える訳がない。
けれど。
「宍戸さん」そう言われて思わず笑いかけてしまった時のアイツが。
「なんだよ、長太郎」
「幸せだと思って」
こっちが恥ずかしくなるくらい輝いて見えたから。そろそろ態度だけでも素直になってやろうか、だな んて。
俺もとことん甘いかもしれない。
でも、時々。
「宍戸先ぱ・・・あ!」
間違えて言って、本当にしょんぼりするから。少し痛む胸を無視して。
どうせ、今だけだ。と心の中で呟いた。
だってそうだろ?呼ぶのが当たり前になるくらい、お前は俺の側にいることになるんだから。
「どうした、“長太郎”」
落ち込むなよ、そう思いを込めて笑いかける。
大丈夫。

だって、俺はお前の名前を間違えたりしないから。




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蛮蛇ver(蛮蛇出来上がり前。切なめ?)


例えるなら、空気。
好きとかそういうのじゃなくて。
彼がいるのが当たり前、彼がいなければ生きていけない。
でも。
ただそれだけ。
決して、恋焦がれるような激情にはなりえない。

だってそうだろ?

いくら空気が必要だからって、それを想うのとはまた別なのだから。
ただ、彼の全てに依存している。
だから、彼に言える言葉は一つ。
好き、でもない。
愛してる、でもない。

――――――お願い。

「そばにいて」




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ディアイザver(ディア→イザ?)


時々考える。
アイツにとって俺はなんなんだろうと。
呼べば答える、ていのいい下僕だろうか。
そう考えると無性にあの声に逆らいたくなる。

「ディアッカ!」

自分を呼ぶ、強い声。
相手が拒むなど、微塵も思っていない、それ。
逆らってやろうか?
半ば本気でそう思って。
そして、諦めた。
それでも変わらないだろう彼にではなく。
それでも変わりたくないと思ってしまった自分に。
溜息一つ。

「なぁ、イザーク」
「・・・なんだ」

ほら。
答えてくれるならいいか、そう思ってしまった。
「俺って馬鹿だよなぁ」
「・・・?前からだろう」


そう、だから救われてる。




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エンエドver


「おちーびさん」
言われて顔を上げた。視線が向かうのはドアではない。
夕日が最後の光を投げかけてから久しい窓。
闇色に溶け込んだ外界から、這い出たように、ソイツはいつも通りそこにいた。

「お前、相変わらずだな」
「そう?もうここが俺の指定席って感じで。おちびさんも慣れたでしょう?」
「・・・“ここ”というか、俺が同じ宿にいたこと自体ないんだがな。どうやって調べてるんだか、全 く・・・」

それでも必ず彼は窓から現れる。
声が聞こえる度に窓へと視線が向かうのはそのせいだ。
エンヴィーはただ笑った。

「そりゃ、もう愛の力で」
「 ・・・言ってろ」

エンヴィーが来たせいで止まっていた本の続きへと視線を戻す。
エンヴィーは気にした様子もなく言葉を続けた。

「でも、なんだかんだ言って俺と話をしてくれるおちびさんが好きだよ。
ねぇ、あと何回こうして訪ねたら、おちびさんは俺の事好きになってくれる?」
「・・・・・・」

そう言って、俺が見てないとでも思ったのか、ふざけた声とは裏腹に珍しく寂しそうな顔をするから。
俺は何だかひどく落ち着かなくて。
そして。

―――――俺も好きかもしれないと気づいてしまった。




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