「はい、愛のロシアンルーレット〜☆」
何故、いきなりロシアンルーレット。
・・・・・・その日、忍足の元には恋人作の愛の試練が唐突にやってきた。
******
驚く忍足を前に、語尾にハートマーク・・・というよりは、心底楽しむようなニュアンスを持たせて、岳人は言い放った。
今日はバレンタイン。
女の子から好きな人にチョコートを渡す、なんていう微妙にお菓子会社の企みも乗せた日本独特の文化は、今年もそれなりに学内を騒がせていた。
だから、恋人である岳人が可愛らしくラッピングを施した小箱を手に現れてもなんら不思議はないはずである。
岳人が冒頭の不穏な台詞を口にさえしてなければ、だが。
彼の持つ箱の中には、同じ大きさの(ただし、幾分違う色もあるが)トリュフチョコが収まっている。
そして後ろでは滝がくすくすと楽しそうに笑っていた。
それだけで、この先の展開が自分にとって決してよくないだろうことが伺えるというものだ。
二人はとても輝いていた。眩しいほどにその笑顔が・・・嗜虐の喜びで。
いや、仮にもそんなことを思ってはいけないだろう。恋人本人を前して。
ぐっと詰まった忍足は、長年培って、色々な危機をするりと交わしてきた独特のおどけたような笑みを浮かべた。
その片頬が引きつるのは、仕方のないことではある。
半分、今回は逃げられない、と心に自ら誓っているのだから。
そう、誓っているのだ。
逃げるわけにはいかない、ではなく、ニゲラレナイという悲観的発想であっても。
自分は遊びではなく、岳人を選んだ。
その証のために。
今はその愛が試される時なのだ・・・!!
―――ただ、命を懸けることにはならないでほしいと痛切に祈ってはいたが。
「どうしたん、岳人」
忍足は取り敢えず理由を聞くことから始めることにした。
嬉しいことは嬉しいのだが、何故こんな不穏な空気を醸し出したチョコレートを受け取るはめに陥っているのか、それがいまいち理解できないのだ。
見た目はおいしそうに違いないのだが、絶対何かがあると疑わない忍足である。
何故なら眩しいほどに岳人の笑顔が・・・・・・(以下略)。
「ん?今日はバレンタインだろ。だからさ、俺がコイビトである侑士にチョコを持って来たとしても、変じゃないよな?」
「そやね」
寧ろ嬉しいくらいである。
だが、忍足はすでに確信していた。岳人は何かに猛烈に怒っている。
彼は怒っていて・・・・・・・その思いのたけをチョコに込めたのは間違いない。
間違いないのだが・・・その理由に彼自身が思い至れないのは致命的ではあった。
「しかも、手作り!果報者だぜ、侑士。味は滝が保障してくれてるしな!・・・・・・まぁ、当たりを引き当てれば、だけど」
ぼそりと最後に付け加えられた言葉がいかにも物騒だ。
ただ、その言葉から全てを食せと言っているわけではないようだ、と内心胸を撫で下ろした。
「喜んでいただくわ」
ようは、外れなければいいのだ。
目の前にはトリュフが8つ。たった一つのはずれを引く確率はそんなに高くない。
忍足は意味がないと評判の伊達眼鏡の奥で鳶色の瞳を細めた。
ラッピング用に買い求めたのだろう、小箱の中に鎮座したトリュフチョコはどれも凝った作りになっていた。
大きさこそ同じだが、見た目はずいぶんと違っている。
白いホワイトチョコレート、ココナッツをまぶしたもの、抹茶をまぶしたもの、薄い茶色はミルクチョコレートだろうか、その隣りはもっといろが黒い。ブラックチョコレートと見ていいものか。その隣りにはココアをまぶしたチョコレートに、いちご色のもの、そして、一口サイズのハート型チョコ。
忍足は悩んだ。
ハズレは一つ、ここは慎重に選ぶべきだ。
だが、うかつには選べない。何故なら、岳人は忍足をよく理解していたし、逆もまたしかりだ。
裏の裏を読まねばならない。普段なら自分が選ぶのはブラックチョコレート、だが今日この日を考えればもちろんハート型チョコだ。
さらに裏を読めば一番甘そうないちごチョコ。だが関係ないと見せかけてココナッツを選ぶのも手だ。
むむむ、と忍足は美眉を顰めた。
ただ、そのどれを選んでも岳人のいう“ハズレ”の可能性は出てくる。というか、どれを選んでもハズレな気がする・・・忍足はごくりと喉を鳴らした。
それだけの気迫を、今の岳人は持っていたのだ。
ふと目を向けると、それに気付いた岳人がにっこりと微笑んだ。
裏を読むんや、自分に言い聞かせる。
だが。
「俺は信じてるよ?侑士が俺の作った”侑士のため“の”たった一つの“チョコレートを、きちんと選んでくれるのを、さ」
忍足は愕然とした。
裏など読みきれる状態ではない。
「たった一つ・・・?」
「愛は一つで十分だろ?」
全くもってその通りだが。その通りだが!!
「俺の愛を召し上がれv」
「・・・・・・」
結局のところ、彼は岳人の笑顔に勝てた試しはない。
「いただきます」
―――――忍足は(引きつった)笑顔で可愛らしく並んだトリュフへと手を伸ばした。
彼の愛はまさに今、試されている。
end?

最近小説書いてなかったので頑張ってみたけど、リハビリにもならな・・・っ(滝汗)
バレンタイン話とか言っちゃいけない気がします。それ以前に、過去を思い返してみてもバレンタインの話ってろくなの書いてない・・・(今更)。
実はこれ、続き物だったのですが、全然筆が進んでくれないので続きを諦めて(おい)アップしました。
でも本当に文章がガタガタ。いつか大量修正してそうだよ、ほんと。
期待には絶対に添えてないと思いますが、ここまで読んでくださってありがとうございました!!
次回こそ精進、精進!!
H19.3.7up
→close←